もりいくすおのヤングレポート

はくちゅうむ

2015 年 8 月 28 日

午後、用事に出るんで乗ろうとした仕事場マンションのエレベーターが階上から降りてきてその扉を開くと、奥の方ににひょろっと背の高い坊主頭の男性が先に乗っていたんでビクッとした。。
男性は、体をこっちに向けてはいるがその首はこれ以上曲がらないだろうというほどにうなだれている。もう、頭が「ぶら下がってる」レベルのうなだれ方だ。だから顔は見えない。うなだれてる首の方向は正面でも横でもなくちょうどその間くらいのところでかしがっている。体がなんとなくふらついてるようにも見える。
いつもの癖で知らない配達員でも何でも挨拶する私はこの時も彼に「こんちわ~」と小さく声をかけたがまったく反応はない。頭をもたげてこっちをチェックしようという気配もない。
この人が「なにか考えこんじゃってる無愛想な住人」なわけではないことは首から垂れているタオル(おそらくよだれかけのたぐい)によってすぐわかった。なんらかの障害のある人なのだろう(あくまで予想)。なぜこのエレベーターに乗っているのかがわからない。身なりは非常にふつうに見える。配達員だったら鼻をかすめる汗の匂いなども無い清潔な印象の人だ。
上の階にいるこの人の身内か知り合いがこの人をエレベーター内に残したままうっかり別の用事をしてるときにあたしが下に行くボタンで呼んじゃった。そんなとこなのだろうか。住人じゃあるまい。はじめて遭った。

なんじゃらほい。

なんじゃらほい。

●どうしていいかわからないのでともかく1階まで一緒に来た。
その間、知らない人とサシだとふつうならある気まずい空気が一切なかった。お互いに独特の距離と意識が働いていた。
とりあえず私は「一階です」とだけ告げた。あいかわらず反応はなかったが、彼はわたしについてくるかのように一緒にエレベーターを降りて出た。私は彼が乗ったまま身内のいるであろう「上の階」に戻るべきと思っていたのでいささかソワソワした。
この人がこのまま車道に出ては危ないなと心配したが、彼は建物の入口のところで足を止め、歩道までは出てこなかった。その場であとから誰かが来るのを待っているように思えた。
いまこれを書いていて思い出したが、これってちょうど「千と千尋の神隠し」で物言わぬ大根みたいな神様と千尋が一緒にエレベーターで移動するシーンに似てる。ともかく3階から下まで降りるその時間が不思議みたいだった。
郵便局から帰ってみるともう男性はいなくなっていた。

アレはほんとに体験したことだったんだろうか?