〜ゾンビデザイン論(加筆版)〜
「いいゾンビ」とはどんなゾンビか。
世界中でい
ま話題の(ウソ)この問題についてゾンビが大好きなもりいくすおが
ナゾの使命感でここに記す。
今回取りあげる作品は個人的に好きな
ゾンビ映画のみです。
クリエーター達はどう演出してきたか、振り返っ
てみることで
今後の世の中の平和と進歩に役立てていただけたらと思い
ます。
●ナイトオブザリビ
ングデッド(68)〜ゾンビ3部作の1作目〜
記念すべき「死んだ者
が未知の力でよみがえって立って歩きだして
うめきながら生きた人間の
肉を食べようと求めてさまよう」っていう個性のゾンビ映画の始祖でありま
す。
「頭を撃てば死ぬ」というルールも含めて、総てこの映画を嚆矢と
して数々の傍流を生みました。
ジョージ・A・ロメロという監督さんが
作りました。
もう、基本形で完成形。ゾンビ自体の完成度は低いけどお手
本です。
スタンダードがないのに役者がよく理解してゾンビをちゃんと
演じてるんですよね。
そんなこんなで革命的な一作であることは論を俟
たない。
●ゾ
ンビ(78)〜ゾンビ3部作の2作目〜
ロメロ監督作品。
「まえへならえ」の姿勢で「たべちゃうぞ〜」といったようすで襲って
くるゾンビ。
妙に機敏なところを見せるゾンビもいるかと思うと襲うの
を待ってくれるゾンビも。
ひじょうに散漫なゾンビ演出で、メイクも凝
った人以外は青いドウランだけ。
だが、人気はダントツの映画。
●死霊のえじき(85)〜
ゾンビ3部作の3作目〜
ロメロ監督のゾンビ3部作の完結編。
メイクがモンスターっぽくなって現実味が無くなっております。
ご
覧のように目のまわりが隆起して、みんな出っ歯になっちゃってんの。
ゾンビと人間の容姿があまりに違うのでゾンビはゾンビ、オレはオレ、
という関わり合い。
ロメロ監督がロケ現場の地元のゾンビファンに得手
勝手に演じさせてるんで粗いのかも。
この監督、「設定」については出
色の発想力を持ってるが、ゾンビ演出は
意外にこだわらない人。
ゾンビを愛する演じ手にまかせちゃう。
ところでこの映画、ピエ
ロとかバレリーナとか、ゾンビのバリエーションもわざとらしいのだが
そんな中でミニスカのゾンビ(上の画像)にはくすおさん萌え。
Mジャクソンの「スリラー」とかで踊る女ゾンビも、もりいには萌えなん
ですな。スロー再生しちゃう。
<知恵のついた珍しいキャラク
ターも登場。
●ランド・オブ・ザ・デッド(05)〜ゾンビ3
部作のその後〜
「ゾンビをどう撮っていいかわからなくなった」と
スランプに陥ってた
ご本家ロメロ監督の満を辞しての最新作。
本作
ではゾンビ達の詠嘆的な叙情味が加わった、彼らの権利の主張と革命が描かれ
る(?)。
3作目において生まれた「知恵がつく」「首を切られても大
丈夫」などというアイデアを
踏襲したロメロ・ルールのゾンビ。
こ
れらの独特のルールは、ぶっちゃけ誰が描いたって大同小異な筈のゾンビ像
(&カニバリズムの表現)に群星を圧する個性を与えている。
<さらに
知恵のついたキャラが活力素的役目を果たしている。
「死霊のえじき」よりはメイクが穏やかになった
ものの、死体と言うより
あいかわらずバケモノっぽさのほうが強い
メイク。
でも、どう撮っても、内容にツッコミどころが多くても、
ご本家がやるならそれでもいいや
という敬意に、いささかの諦観をまじ
えてファンは本作を受け入れる。
●バタリアン(85)〜ロメロ映画のパロディ〜
<「そりゃ
〜」てかんじ
コメディ。
ゾンビ映画を愛するダン・オバノ
ン監督作品。
頭を撃っても死なないし、走るし、喋るし、最悪ルールの
ゾンビ。
被害者の「映画と違うじゃねえかッ!!」という台詞が笑わせ
ます。
メイクは特にこだわりがないらしく、白塗りが主。
これはこ
れでオッケー。
「ナイトオブザリビングデッド」をリスペクトした作品だか
らタイトルも
「リターンオブザリビングデッド」なのに、なぜか邦題は
「バタリアン」(意味不明)。
死に様によっていろんなゾンビが出てく
るが日本の配給会社はそれぞれに
オバンバ、とかタールマンなどの名前
を勝手に付けて字幕に反映し、作品画面を汚した。
そういうこと
する業者は、クソを食らって西へ飛んでほしいと思った。
●ナイトオブザリビングデッ
ド死霊創世記(90)〜ロメロ第1作のリメイク〜
<死化粧
した解剖用の死体もよみがえる…
ロメロ映画のメイクを担当して
たトム・サビーニ監督作品。
昔の映画の染め直しではありますが、わた
しに言わせるともっとも「正しい」ゾンビメイクと演出がこれです。
メ
イクは徹底的に死体っぽく、「死んでる人間が歩いている」演出に腐心のあと
がうかがえる白眉の出来映え。
目をつぶってゆっくりとフラフラ歩く…
これこそ涅槃無我の境に入った無意識状態であります。
この作品は、
異常事態をリアルに構成するために「ゾンビ」と言うワードを劇中で一度も使
っていない。
ところが初めリリースされた日本語字幕版スタッフはその
こだわりが理解できなくて
言ってもいない「ゾンビ」というワードを字
幕に入れて、はなもちならなかったが
04年に出たDVDではキレイに無
くなっていた。万歳。(<しかしこのDVD、吹き替えは「ゾ
ンビ」連発してて最悪)
●バイオハザード(01)〜日本の人気アクショ
ンゲームの映画化〜
ドイツ人のスタントマンが演じてるゾンビは男も女もでかく
てごつい。
生前はふつうのビジネスマンなのだが、ゾンビになる
とみんな屈強になる。
楽しくて大好きな映画だが、ゾンビが哀愁のない
スポーツマンタイプだからいまいちノれない。
洋ピンポルノが「イエ
ス!イエス!」ッて節操がなくってスポーティな感じで抜けないのと同じ。
<「ごるぁ〜っ」ていうかんじがなあ…。
●ドーンオブザデッド
(04)〜ロメロ第2作のリメイク〜
<はしります!
ロ
メロの作品主旨を敷衍し、純然たるオリジナルデザインにまで昇華させた傑
作。
公開前のスチルだけ見たときゃあ、走るゾンビ!?って心配した
が、
これが非常事態をテンポよく演出する助けることになって○(マ
ル)。
換骨脱胎とはまさにこういうこと。
走る以外にも、噛まれて
死んだのでなければゾンビ化しないというルールがある。
●ショーン・オブ・ザ・デッ
ド(04)〜ロメロに敬意を表したコメディ〜
コメディであり、
イギリスの作品でありながらひじょうに正しいゾンビ演出。
すなわち
「遅い」「死体っぽい」。
目玉がCGのエフェクトによって一様に白目に
なってるのが特徴。
キョンシー映画よろしく、本作でも「襲われな
い」、とあるルールがおめみえする。
制作者のオリジナル作品への、個人的とも言える愛が露骨に表現されてるものの
しかめつらしい冒険にはなっておらず、徹頭徹尾「笑い」に徹した姿勢を評価したい。
ていうか、すげーおもしろかった。
以上の結果、ものすごくのろまな「死霊創世記」のゾンビ演出と、
ものすごく運動神経の発達した「ドーンオブザデッド」が珠玉の2本。ということで
ロメロ監督のオリジナルより、そっちに軍配なのはなんでかって言うと
ええと〜、わかんないや!
じゃ!グッバイ!
おわり